Internet Explorer（IE）のBMPファイル処理にバッファ・オーバーランの脆弱性が存在するなど、3種類の脆弱性が存在し、リモートでプログラムが実行される危険がある。攻撃者は、この脆弱性を悪用する不正なWebサイトを用意することで、Webサイトを訪問するだけでプログラムのダウンロードと実行が可能である。

　今回、明らかになった脆弱性はすべて実証コードが公開されている。この脆弱性は、トロイの木馬型ウイルス「Download.Ject（JS_JECT.A）」をユーザーのコンピュータに感染させる際に悪用されている。今後もウイルスなどに悪用される危険性が高いので、至急、修正プログラムの適用を開始する必要がある。

・HotFix Report（MS04-011の脆弱性を悪用するトロイの木馬型ウイルスを検出）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2004/news04-0630.html#01

　新たに見つかったIEの脆弱性には、「ナビゲーション・メソッドのクロス・ドメインの脆弱性」「BMPファイルのバッファ・オーバーランの脆弱性」「GIFファイルのダブル・フリーの脆弱性」の3種類が存在する。これらを悪用したWebサイトを訪問するだけで、ユーザーのコンピュータにプログラムが自動的にダウンロードされ、実行される危険性がある。

　プログラムは、ログオンしているユーザーの権限で実行される。ユーザーが管理者権限でログオンしている場合、プログラムのインストール、データの表示／変更／削除、完全な特権を持つ新規のアカウントの作成などが実行され、コンピュータの制御が奪われる。

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MS04-025の修正プログラムで脆弱性以外に解消される不具合
　MS04-025の修正プログラムには、脆弱性の修正のほか、以下の不具合修正プログラムも含まれる。

・サポート技術情報 831167（Web サイトにログオンできない、インターネット トランザクションを完了できない、またはHTTP 500（内部サーバー エラー）ページが表示される）：［IE 6 SP1］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;831167

・サポート技術情報 837209（HTTPS WebページがInternet Explorer 5.5で完全にダウンロードしません。）：［IE 5.5 SP2］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;837209

・サポート技術情報 839571（接続は、 LAN自動構成とプロキシ設定をWindows Server 2003の使用しません。）：［IE 6 for Windows Server 2003］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;839571

・サポート技術情報 817786（Internet ExplorerでのWebページを更新すると、アクセス違反が発生します。）：［IE 6］［IE 6 SP1］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;817786

■MS04-004以降の不具合修正を含む企業向けロールアップ修正プログラムも提供
　MS04-025の修正プログラムのほか、MS04-004以降にリリースされたIE用の不具合修正プログラムを含む、企業向けの修正プログラムが「サポート技術情報：871260」で提供されている。この修正プログラムは、MS04-025の修正プログラムを含むだけではなく、同時に多くの不具合を解消する。可能ならばMS04-025の修正プログラムの代わりに、「サポート技術情報：871260」で提供されている企業向けの修正プログラムを適用することを推奨する。解消される不具合は、「サポート技術情報：871260」を参照のこと。

・サポート技術情報 871260（An update rollup is available for Internet Explorer versions 5.x and 6.0）：
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;871260

　8月2日17時の時点で、上記のサポート技術情報（871260）はまだ英語版のままである。英語版のページから修正プログラムをダウンロードする場合は、ダウンロード・センターのページにジャンプした後で右側枠の「Change language」から日本語を選んで、日本語版のダウンロード・センターのページにジャンプする必要がある。

　さらに8月2日の時点で、このロールアップ修正プログラムを適用してからWindows Updateを起動すると、MS04-025の修正プログラムが未適用であると検出される（Windows 2000＋IE 6 SP1／Windows XP SP1a＋IE 6 SP1で確認）。この後でMS04-025をWindows Updateから適用しても、Windows Updateは何度もMS04-025が未適用であると検出してしまう。現時点でWindows UpdateやSUSではこのロールアップ修正プログラムを適用できないが、MS04-025の検出についても、このロールアップ修正プログラムの適用／未適用が考慮されていないようだ。

　なお8月2日の時点で、この企業向けロールアップ修正プログラムのほとんどのバージョンが、ダウンロード センターの新着順検索結果に表示されない。キーワードに 「871260」 を入力して検索すると、すべて表示されるようだ。

・ダウンロード センター（新着順の検索結果）：
http://www.microsoft.com/downloads/results.aspx?sortCriteria=date&OSID=
&productID=&CategoryID=&freetext=&DisplayLang=ja&DisplayEnglishAlso=

　またWindows Sever 2003用の企業向けロールアップ修正プログラムは、MS04-025とまったく同じものが提供されている。

■「サポート技術情報：840309」の修正プログラムが適用済みの場合は注意が必要
　「サポート技術情報：840309」の修正プログラムを適用したWindows XPのコンピュータにMS04-025の修正プログラムを適用すると、Windows エクスプローラがエラーを発生するようになるとのことだ。この場合、代わりに前述のロールアップ修正プログラムを適用するか、MS04-025の適用前に「サポート技術情報：840309」の修正プログラムをアンインストールするか、レジストリを事前に修正するという対処方法が記されている。

・サポート技術情報840309（Browsing the My Documents folder on a network share with Windows Explorer from a Windows XP-based computer takes longer than expected）：
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;en-us;840309

■Windows NT Workstation 4.0 SP6aとWindows 2000 SP2も修正プログラムの対象
　Windows NT Workstation 4.0 SP6aとWindows 2000 SP2は、ライフサイクル・ポリシーにより、2004年6月30日でサポートが終了している。しかしマイクロソフトは、MS04-025の修正プログラムに関しては開発作業が6月30日時点でほぼ終了していたため、提供を行ったとしている。今後は、サポート期限を過ぎたWindows NT Workstation 4.0 SP6aとWindows 2000 SP2に対する修正プログラムの提供が行われない可能性が高い。そのため、OSのバージョンアップまたはサービスパックの適用を行った方がよい。ちなみにWindows NT Server 4.0のサポートは、2004年12月31日に終了する。

■MBSA 1.2の結果
　MS04-025の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 1.2で確認可能だ。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新」の「結果の詳細情報」に、「Internet Explorer 用の累積的なセキュリティ更新プログラム (867801)」が表示される。また、「サポート技術情報：840309」で提供されている企業向けロールアップ修正プログラムを適用後、MBSA 1.2を実行すると、「ファイル バージョンは予期されたより新しいバージョンです。」と表示される。 企業向けロールアップ修正プログラムに、MS04-025が含まれることが反映されていないようだ。

　MS04-025の修正プログラムでは、Internet Explorer（IE）に関する以下の 新たな3種類の脆弱性を解消する。

・ナビゲーション・メソッドのクロス・ドメインの脆弱性
　IEのナビゲーション・メソッドにクロス・ドメインの脆弱性が存在する。クロス・ドメインとは、現在アクセスしているWebサイトが、異なるドメイン（別のWebサイトやローカル・コンピュータ）の情報にアクセスできないようにするもの。これにより、不正なアクセスを防ぐことを可能にする。

　しかしActiveXコントロールのADODB.Streamなどを悪用することで、ユーザーのコンピュータ上でスクリプト・コードの実行を可能にするクロス・ドメインの脆弱性が見つかっている。この脆弱性を悪用すると、最悪の場合、ユーザーのコンピュータの制御が完全に取得されてしまう危険がある。

　この脆弱性は、不正なWebサイトへアクセスしなければ悪用されることはないが、Download.Jectウイルスや不正なポップアップ広告のインストールへ悪用されているので注意が必要だ。また、多くの実証コードも公開されているので、引き続き悪用される危険性が高い。

・BMPファイルのバッファ・オーバーランの脆弱性
　BMPファイルの処理にバッファ・オーバーランの脆弱性があり、リモートでプログラムが実行される危険がある。IEで特別に細工されたBMPファイルを開くと、バッファ・オーバーランにより、任意のプログラムが実行される。これにより、ユーザーの権限で任意の操作が可能となる。ユーザーが管理者特権でログオンしている場合、この脆弱性が悪用されると、コンピュータの制御が完全に取得される危険性がある。

　マイクロソフトは、この脆弱性がすでに悪用されたとの報告を受けているとしている。また実証コードもすでに公開されている。電子メール型ウイルスに悪用される危険性が高い脆弱性なので注意が必要だ。

・GIFファイルのダブル・フリーの脆弱性
　GIFファイルの処理にバッファ・オーバーランの脆弱性があり、リモートでプログラムが実行される危険がある。特別に細工されたGIFファイルを処理すると、すでに割り当てられていたメモリを解放してしまう不具合がある。解放されているメモリをさらに解放させると（Double Free）、攻撃者により、メモリに任意のコードを追加し、これを実行することを可能にする。

　各コンピュータによってメモリ構造が異なるため、多くのコンピュータに対してコードを実行するようにウイルス開発者が設計することは困難であると思われる。多くの場合、この脆弱性が悪用されても、IEが異常終了するサービス拒否となる。ただし、すでに実証コードが公開されていることから、ウイルスなどに悪用される危険性がある。

　以下のファイルにパッチが適用される。障害の発生が懸念される場合は、これらのファイルのバックアップを取っておくとよい。
　
■MS04-025の修正プログラム：

■サポート技術情報：871260の修正プログラム（企業向けロールアップ修正プログラム）：

■MS04-025の修正プログラム：
　Windows Server 2003以外の環境で修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、IEの［ヘルプ］−［バージョン情報］メニューを選択する。表示されたダイアログの［更新バージョン］フィールドにQ867801が表示されていることを確認する。

　Windows Server 2003は、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\Hotfix\KB867801のIsInstalled DWORD値が「1」であることを確認

■サポート技術情報：871260の修正プログラム（企業向けロールアップ修正プログラム）：
　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、IEの［ヘルプ］−［バージョン情報］メニューを選択する。表示されたダイアログの［更新バージョン］フィールドにQ871260が表示されていることを確認する。

■MS04-025の修正プログラム：

Internet Explorer 5.01 SP2：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp2-KB867801-Windows2000sp2-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.01 SP3：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp3-KB867801-Windows2000sp3-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.01 SP4：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp4-KB867801-Windows2000sp4-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.5 SP2：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.5sp2-KB867801-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0-KB867801-WindowsXP-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 6 SP1：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0sp1-KB867801-x86-JPN.exe」で登録

■サポート技術情報：871260の修正プログラム（企業向けロールアップ修正プログラム）：

Internet Explorer 5.01 SP2：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp2-KB871260-Windows2000sp2-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.01 SP3：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp3-KB871260-Windows2000sp3-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.01 SP4：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp4-KB871260-Windows2000sp4-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 5.5 SP2：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.5sp2-KB871260-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0-KB871260-WindowsXP-x86-JPN.exe」で登録

Internet Explorer 6 SP1：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0sp1-KB871260-x86-JPN.exe」で登録