Windows OSのサーバ・メッセージ・ブロック（SMB）が特定のSMBリクエストを処理する方法に脆弱性が存在し、特権の昇格やサービス拒否が起きる。攻撃は、ローカルでコンピュータにログオンした状態で、細工したSMBリクエストを送信することで実行される。ローカルでログオンしていることが攻撃の条件となるため、インターネット経由による攻撃が実行される可能性は低い。

　なおSMBは、Windows OS標準のプロトコルの1つだが、この脆弱性は実装に依存するためWindows 98／98SE／Meには影響しないとしている。

　マイクロソフトによれば、MS06-030の脆弱性は非公開で報告されたとしており、攻撃例は確認されていないという。しかし、すでに実証コードが一般に公開されていることから、ウイルス／ワームなどに悪用される危険性が高まっている。なるべく早急に修正プログラムを適用した方がよい。

　SMBは、Windows OSがファイルやプリンタ、シリアル・ポートを共有したり、コンピュータ間で通信を行ったりする際に利用するWindowsネットワークの標準プロトコルである。

　特定のSMBリクエストを処理する方法に、「SMBドライバの特権の昇格の脆弱性（深刻度：重要　CVE：CVE-2006-2373）」と「SMBの無効なハンドルの脆弱性（深刻度：緊急　CVE：CVE-2006-2374）」の2種類の脆弱性が存在する。

　脆弱性を発見したiDefense Labs.（VeriSignの一部門）によれば、どちらの脆弱性も、Microsoft Client Side Caching（CSCDLL.DLL）とMicrosoft Server Message Block Redirector Driver（MRXSMB.SYS）の論理エラーに起因するという。「SMBドライバの特権の昇格の脆弱性」では、脆弱性を悪用することで、カーネルと同じ特権モードであるリング0でのコード実行が可能になるとしている。この脆弱性が悪用された場合は、コンピュータの制御が完全に奪われることになるので注意が必要だ。

・iDefense Lab.（Windows MRXSMB.SYS MRxSmbCscIoctlOpenForCopyChunk Overflow）：
http://www.idefense.com/intelligence/vulnerabilities/display.php?id=408

・iDefense Lab.（Windows MRXSMB.SYS MrxSmbCscIoctlCloseForCopyChunk DoS）：
http://www.idefense.com/intelligence/vulnerabilities/display.php?id=409

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MBSA 2.0の結果
　MS06-030の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 2.0で確認可能である。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新プログラム」の「結果の詳細情報」に以下のいずれかが表示される。

• Windows 2000 用セキュリティ更新プログラム (KB914389)
• Windows XP 用セキュリティ更新プログラム (KB914389)
• Windows Server 2003 用セキュリティ更新プログラム (KB914389)

　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

・Windows 2000 SP4：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows 2000\SP5\KB914389\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows XP SP1／SP1a／SP2：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP3\KB914389\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP未適用／SP1：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP2\KB914389\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows 2000 SP4：
［展開ビュー］−［OS］タブに「名前：Windows2000-KB914389-x86-JPN.EXE」で登録

・Windows XP SP1／SP1a／SP2：
［展開ビュー］−［OS］タブに「名前：WindowsXP-KB914389-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP未適用／SP1：
［展開ビュー］−［OS］タブに「名前：WindowsServer2003-KB914389-x86-JPN.exe」で登録