ActiveXコントロールがInternet Explorer（IE）を介してアクセスされる際にメモリ破損の脆弱性が起こるなどにより、リモートで任意のコードが実行される危険性がある。細工されたWebページを開くと、ユーザーの操作なしに任意のコードが実行される危険性がある。アドウェアやトロイの木馬のインストールに悪用されることが懸念される。

　マイクロソフトによれば、MS07-045の修正プログラムで解消する脆弱性は、すべて非公開で報告されたとしており、現時点では実証コードや攻撃例の報告はないとしている。ただIEに対しては、MS07-045の修正プログラムでも解消されていない、報告済みの数多くの脆弱性が残されている。修正プログラムを至急適用し、脆弱性を解消するのはもちろんのこと、引き続き、IEの運用には注意する必要がある。

　MS07-045の修正プログラムは、以下の3件の脆弱性を解消する。

■ActiveXコントロールのメモリ破損の脆弱性（深刻度：緊急　CVE：CVE-2007-3041）
　ActiveXコントロールのPDWIZARD.OCX（Package and Deployment Wizard）がIEを介してアクセスされることに起因するメモリ破損の脆弱性が存在する。細工されたWebページを開くと、ユーザーの操作なしに、任意のコードが実行される危険性がある。

　この脆弱性は、PDWIZARD.OCXのCLSIDに対してkillbitを設定することで解消される。

■ActiveXオブジェクトの脆弱性（深刻度：緊急　CVE：CVE-2007-2216）
　ActiveXコントロールのTLBINF32.DLL（VSTLBINF.DLLの下で呼び出されることがある）が、IObjectSafetyインターフェイス（スクリプトの実行や初期化を行ってもそのコントロールが安全であること示す機能）を正しく実装していないことに起因する脆弱性が存在する。細工されたWebページを開くと、ユーザーの操作なしに、任意のコードが実行される危険性がある。

　この脆弱性は、TLBINF32.DLLのCLSIDに対してkillbitを設定することで解消される。

■CSSメモリ破損の脆弱性（深刻度：緊急　CVE：CVE-2007-0943）
　IEが、CSS（カスケード・スタイル・シート）の特定の文字列を解析する過程にメモリ破損の脆弱性が存在する。細工されたWebページを開くと、ユーザーの操作なしに、任意のコードが実行される危険性がある。

　なお、この脆弱性はInternet Explorer 5.01 SP4のみ影響を受ける。

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MBSA 2.0.1の結果
　MS07-045の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 2.0.1で確認可能だ。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新」の「結果の詳細情報」に、IEのバージョンによって以下のいずれかが表示される。

• Internet Explorer 5.01 Service Pack 4 用の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Internet Explorer 6 Service Pack 1 用の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Windows XP 用 Internet Explorer 6 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Windows XP 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Windows Server 2003 用 Internet Explorer 6 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Windows Server 2003 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)
• Windows Vista 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB937143)

■MS07-045の修正プログラムを適用しても解消されない脆弱性が存在する
　2007/06/13日付けのHotFix Weeklyで報告した「Internet Explorerの競合状態で情報漏えいが起きる危険性」は、MS07-033と同様、MS07-045でも解消されていない可能性が高い。このように、たとえMS07-045の修正プログラムを適用しても、IEの運用には引き続き十分な注意が必要だ。

・HotFix Weekly 2007/06/13日付け配信（Internet Explorerの競合状態で情報漏えいが起きる危険性）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2007/news07-0613.html#01
＊配信時、リンクが間違っていました。お詫びして訂正します。

■ActiveXコントロールにkillbitを設定
　MS07-045の修正プログラムでは、以下のCLSIDに対してkillbitを設定し、ActiveXコントロールの脆弱性を攻撃に悪用されるのを防いでいる。

　MS07-028の修正プログラムで解消されているCAPICOM（Cryptographic API Component Object Model）のActiveXコントロール（CAPICOM.DLL）に対しても、脆弱性が悪用されないようにkillbitが設定されている。またAkamai Technologies、Lenovo、Motive Incorporatedが提供しているActiveXコントロールに対しても、killbitを設定することで、脆弱性を回避するようになっている。

■MS07-045の修正プログラムには複数の不具合修正が含まれる
　MS07-045の修正プログラムには、以下の不具合修正が含まれている。MS07-045の修正プログラムを適用することで、これらの不具合が解消する可能性がある。

　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

・Windows 2000 SP4＋IE 5.01 SP4：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Internet Explorer 5.01\SP4\KB937143-IE501SP4-20070717.120000\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows 2000 SP4＋IE 6 SP1：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Internet Explorer 6\SP1\KB937143-IE6SP1-20070717.120000\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows XP SP2＋IE 6：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP3\KB937143\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows XP SP2＋IE 7：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP0\KB937143-IE7\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 6：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP3\KB937143\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 7：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP0\KB937143-IE7\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Internet Explorer 7（Windows Vista）：
置き換わるファイルのバージョンで確認する

・Windows 2000 SP4＋IE 5.01 SP4：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp4-KB937143-Windows2000sp4-x86-JPN.exe」で登録

・Windows 2000 SP4＋IE 6 SP1：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0sp1-KB937143-Windows2000-x86-JPN.exe」で登録

・Windows XP SP2＋IE 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：WindowsXP-KB937143-x86-JPN.exe」で登録

・Windows XP SP2＋IE 7：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE7-WindowsXP-KB937143-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：WindowsServer2003-KB937143-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 7：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE7-WindowsServer2003-KB937143-x86-JPN.exe」で登録

・Internet Explorer 7（Windows Vista）：
現在のところサポート対象外