Windows OS上でUNIXとの相互運用やUNIXからの移行を支援するためのコンポーネントであるWindows Services for UNIX（SFU）／UNIXベース・アプリケーション用サブシステム（SUA）に含まれるsetuidを利用するバイナリ・ファイル（setuidバイナリ・ファイル）の処理に脆弱性が存在する。攻撃者が細工済みのsetuidバイナリ・ファイルを直接ローカルで実行するか、あるいはユーザーを誘導して実行させることで攻撃が成立する。その結果、特権の昇格が起こり、攻撃者にコンピュータの制御が完全に奪われる危険性がある。

　SFU 3.0／3.5はアドオン・コンポーネントで、デフォルトのWindows OS環境には含まれていない。SFUを利用するためには、別途、コンポーネントを入手してインストールする必要がある（SFU 3.5は無償でダウンロード可能）。同様に、SUAもWindows Server 2003 R2／Windows Vistaのオプション・コンポーネントで、デフォルト状態では有効になっていない。そのため、SFU 3.0／3.5を明示的に追加インストールしているか、Windows Server 2003 R2／Windows VistaでSUAを明示的に有効にしていない限り、この脆弱性の影響は受けない。

　マイクロソフトによれば、MS07-053の脆弱性は限定的な範囲で一般に公開されていたということだ。ただし現時点では実証コードや攻撃事例は見つかっていないという。攻撃対象がSFUもしくはSUAをインストールしている環境に限定されるため、攻撃に悪用される危険性はそれほど高くないものと思われる。しかし脆弱性自体は容易に悪用可能なものと思われるので、限定的な攻撃に悪用されることも懸念される。SFUまたはSUAをインストールしている場合は、なるべく早期に修正プログラムを適用した方がよい。

　SFU／SUAが、setuidバイナリ・ファイルの接続の資格情報を処理する際に予期しないエラーが発生することに起因する脆弱性が存在する。細工されたsetuidバイナリ・ファイルがローカルで実行されると、特権の昇格が起きる危険性がある。

　SFU／SUAではPOSIX標準に準拠しており、実行時にユーザーID（UID）とグループID（GID）の両方を設定するビットをファイルに含めることができる。どちらかまたは両方のビットがバイナリ・ファイルに設定されている場合、プロセスはファイルのUIDまたはGIDの権限で実行される。つまり特権のないユーザーであっても、ファイルの所有者やグループの特権でプログラムが実行できるようになる。sendmailなどのプログラムをデーモンとして動かす場合などに、setuidを利用する。

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MBSA 2.0.1の結果
　SFU 3.0／3.5を除き、MS07-053の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 2.0.1で確認可能だ。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新」の「結果の詳細情報」に以下のいずれかが表示される。SFU 3.0／3.5は、MBSA 2.0.1のサポート対象外のため確認できない。

• Windows Server 2003 用セキュリティ更新プログラム (KB939778)
• Windows Vista 用セキュリティ更新プログラム (KB939778)

■SFU 3.0／3.5向け修正プログラムは手動で適用する必要あり
　MS07-053のSFU 3.0／3.5向け修正プログラムは、Windows Update／Microsoft Update／自動更新に対応していない（SUS／WSUSにも対応していない）。ダウンロード・センターから修正プログラムをダウンロードし、手動で適用する必要があるので注意が必要だ。

■Windows Server 2003 SP2＋SFU 3.5にはKB936529の修正プログラムの適用が必須
　SFU 3.5をインストールしたWindows Server 2003にSP2を適用した場合、MS07-053のSFU 3.5向け修正プログラムの適用時に一部のファイル（psxdll.dllとpsxss.exe）が正しく更新されないという現象が確認された。これはSP2の適用時に当該ファイルが誤ってUNIXベース・アプリケーション用サブシステム（SUA）のものに置き換えられてしまう、SP2の不具合が原因である。

　この問題を解消するには、KB936529の修正プログラムを事前に適用する必要がある。以下のKB936529の記述によれば、SFU 3.5をインストールしたWindows Server 2003では、SP2を適用した時点でSFU 3.5の一部機能が利用できなくなるとのことだ。つまり機能とセキュリティの両面で、KB936529は必須の修正プログラムといえる。

・マイクロソフト サポート技術情報（Some Interix-related functions do not work, and you cannot open a command shell after you upgrade computers to Windows Server 2003 with Service Pack 2）：
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;936529

　すでにMS07-053の修正プログラムが適用済みの場合は、いったんKB936529の修正プログラムを適用してから、再度MS07-053の修正プログラムをすればよい。ファイルが正しく更新されたことを確認するには、%SystemRoot%\system32フォルダにあるpsxdll.dllとpsxss.exeのファイルバージョンが「8.0.1969.58」以上かつ「9.0.0.0」未満であることを確認する。

■SUAを組み込んでいないとSUA向け修正プログラムの適用に失敗する
　 SUA向け修正プログラムは、適用時にSUAが組み込み済みかどうかを確認しており、組み込まれていない場合はエラー・コード「0xf0f4」により適用を中止してしまう。つまりSUAの組み込み前にあらかじめ適用しておくことはできない。SUAを組み込んだら、忘れずにMS07-053のSUA向け修正プログラムを適用するように注意しよう。

　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

・Windows Services for UNIX 3.0：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Microsoft Services for UNIX\SP0\KB939778\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Services for UNIX 3.5：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Microsoft Services for UNIX\SP0\KB939778\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 R2＋UNIXベース・アプリケーション用サブシステム：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP3\KB939778\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Vista＋UNIXベース・アプリケーション用サブシステム：
置き換わるファイルのバージョンで確認する

・Windows Services for UNIX 3.0：
［展開ビュー］−［IIS］タブに「名前：SFU3-KB939778-X86-JPN.exe」で登録

・Windows Services for UNIX 3.5：
［展開ビュー］−［IIS］タブに「名前：SFU35-KB939778-X86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 R2＋UNIXベース・アプリケーション用サブシステム：
［展開ビュー］−［IIS］タブに「名前：WindowsServer2003-KB939778-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Vista＋UNIXベース・アプリケーション用サブシステム：
現在のところサポート対象外