メモリ・マネージャがメモリの割り当てや仮想アドレス記述子（Virtual Address Descriptor：VAD）を処理する方法に脆弱性が存在する。細工されたプログラムを実行すると、権限の昇格が起こり、コンピュータの制御が完全に奪われる危険性がある。トロイの木馬やウイルスがシステムの制御を奪うために、この脆弱性を悪用することが考えられる。

　仮想アドレス記述子を処理する過程に整数オーバーフローの脆弱性が存在し、メモリの割り当てのマッピング・エラーやメモリ破損が起こる。その結果、権限の昇格が起きる危険性がある。なお攻撃を実行するには、認証されたユーザーである必要がある。

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MBSA 2.1の結果
　MS08-064の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 2.1で確認可能である。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新プログラム」の「結果の詳細情報」に、OSのバージョンによって以下のいずれかが表示される。

• Windows XP 用セキュリティ更新プログラム (KB956841)
• Windows Server 2003 用セキュリティ更新プログラム (KB956841)
• Windows Vista 用セキュリティ更新プログラム (KB954211)
• Windows Server 2008 用セキュリティ更新プログラム (KB956841)

■MS08-064の修正プログラム適用前に十分な検証が必要
　MS08-064の修正プログラムは、Windows OSのカーネル・ファイルを置き換える。カーネル・ファイルの置き換えを含む修正プログラムは、比較的不具合の発生頻度が高い。例えば、MS06-049のWindows 2000向けの修正プログラムでは、NTFS圧縮ファイルが壊れる不具合が発生している。事前に十分な検証を行った方がよい。なお、現時点では不具合発生の情報はない。

・HotFix Alert MS06-049（Windows 2000カーネルの未チェック・バッファの脆弱性により、特権の昇格が起こる危険性）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2006/ms06-049.html

・HotFix Weekly 2006/09/06日付け配信（MS06-049の修正プログラム適用でNTFS圧縮ファイルが壊れる不具合）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2006/news06-0906.html#01

■Windows Vista SP未適用／SP1向けとWindows Server 2008向けの修正プログラムは同じもの
　MS08-064のWindows Vista SP未適用／SP1向けとWindows Server 2008向けの修正プログラムは、ダウンロード・センターなどでは別のものとして扱われているが、修正プログラム自体はまったく同じものである。DA Labでは、Windows Server 2008向けの修正プログラムをWindows Vista Businessに適用できることを確認している。

　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

・Windows XP SP2／SP3：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP4\KB956841\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP1／SP2：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP3\KB956841\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Vista SP未適用／SP1：
置き換わるファイルのバージョンで確認する

・Windows Server 2008：
置き換わるファイルのバージョンで確認する

・Windows XP SP2／SP3：
［展開ビュー］−［OS］タブに「名前：WindowsXP-KB956841-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP1／SP2：
［展開ビュー］−［OS］タブに「名前：WindowsServer2003-KB956841-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Vista SP未適用／SP1：
サポート対象外

・Windows Server 2008：
サポート対象外