Internet Explorer（IE）のファイルのダウンロード処理過程にメモリ破損の脆弱性が存在し、細工されたWebページを開くと、ユーザーの操作なしに任意のコードが実行される危険性がある。アドウェアやトロイの木馬のインストールに悪用されることが懸念される。

　また、MS07-057の修正プログラムでは、IEのアドレス・バーのなりすましを可能にする3種類の脆弱性も解消する。細工されたWebページを開くと、アドレス・バーに示されたURLとは異なる攻撃用のWebページが表示される危険性がある。フィッシングなどに悪用されることが懸念される脆弱性だ。

　IEに対しては、現在多くの脆弱性が報告されており、MS07-057の修正プログラムを適用しても、報告済みのすべての脆弱性は解消されない。修正プログラムを至急適用し、脆弱性を解消するのはもちろんのこと、引き続き、IEの運用には注意する必要がある。

　MS07-057の修正プログラムは、以下の3件の脆弱性を解消する。

■エラー処理のメモリの破損の脆弱性（深刻度：緊急　CVE：CVE-2007-3893）
　 IEがファイルをダウンロードしている際のキュー（待ち行列）を処理する過程に、特定の状況でエラーが正しく処理されないことに起因するメモリ破損の脆弱性が存在する。細工されたWebページをIEで開くと、脆弱性が悪用され、ユーザーの操作なしに任意のコードが実行される危険性がある。

　マイクロソフトによれば、この脆弱性は非公開で報告されたとしており、現時点では実証コードや攻撃例は確認されていないということだ。

■アドレス・バーのなりすましの脆弱性（深刻度：警告　CVE：CVE-2007-3892）
　 IEにアドレス・バーのなりすましが可能な脆弱性が存在する。細工されたWebページを開くと、アドレス・バーには攻撃者が用意した偽装用URLが示される一方、ブラウザ・ウィンドウには、そのURLとは異なるWebページが表示される危険性がある。

　マイクロソフトによれば、この脆弱性は非公開で報告されたとしており、現時点では実証コードや攻撃例は確認されていないということだ。

■アドレス・バーのなりすましの脆弱性（深刻度：警告　CVE：CVE-2007-1091／CVE-2007-3826）
　 CVE-2007-1091の脆弱性は、2007/03/07日付けHotFix Weeklyで報告済みの「Internet Explorer 7などにおけるonunloadイベントの脆弱性により、アドレス・バーが偽装できる危険性」を解消する。

・HotFix Weekly 2007/03/07日付け（Internet Explorer 7などにおけるonunloadイベントの脆弱性により、アドレス・バーが偽装できる危険性）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2007/news07-0307.html#01

　CVE-2007-3892と同様のアドレス・バーのなりすましの脆弱性だが、CVE-2007-3892とは異なる原因による。細工されたWebページを開くと、アドレス・バーには攻撃者が用意した偽装用URLが示される一方、ブラウザ・ウィンドウには、そのURLとは異なるWebページが表示される危険性がある。

　この脆弱性に関する情報や実証コードは、すでに一般に公開されている。ただしマイクロソフトによれば、現時点では攻撃例は確認されていないという。

■適用テストの結果
　DA Labでは、以下のプラットフォームで修正プログラムの適用テストを行った。

■MBSA 2.0.1の結果
　MS07-057の修正プログラムが正しく適用されているかどうかは、MBSA 2.0.1で確認可能だ。未適用の場合は、「Windowsのセキュリティの更新」の「結果の詳細情報」に、IEのバージョンによって以下のいずれかが表示される。

• Internet Explorer 5.01 Service Pack 4 用の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Internet Explorer 6 Service Pack 1 用の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Windows XP 用 Internet Explorer 6 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Windows XP 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Windows Server 2003 用 Internet Explorer 6 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Windows Server 2003 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)
• Windows Vista 用 Internet Explorer 7 の累積的なセキュリティ更新プログラム (KB939653)

■MS07-057の修正プログラムを適用しても解消されない脆弱性が存在する
　2007/06/13日付けのHotFix Weeklyで報告した「Internet Explorerの競合状態で情報漏えいが起きる危険性」は、MS07-033／045と同様、MS07-057でも解消されていない可能性が高い。このように、たとえMS07-057の修正プログラムを適用しても、IEの運用には引き続き十分な注意が必要だ。

・HotFix Weekly 2007/06/13日付け配信（Internet Explorerの競合状態で情報漏えいが起きる危険性）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2007/news07-0613.html#01

■ActiveXコントロールにkillbitを設定
　MS07-057の修正プログラムでは、以下のCLSIDに対してkillbitを設定し、ActiveXコントロールの脆弱性を攻撃に悪用されるのを防いでいる。なおこのCLSIDは、MS06-061（Microsoft XML コア サービスの脆弱性により、リモートでコードが実行される）でもkillbitが設定されているものである。

・HotFix Alert MS06-061（MSXMLのXSLTコントロールの脆弱性などにより、リモートで任意のコードが実行される危険性）：
http://www.hotfix.jp/archives/alert/2006/ms06-061.html

■PNGについてもJPG／GIFと同様のMIMEスニッフィングが実行される
　 MS07-057の修正プログラムによって、PNGファイルのMIMEスニッフィング安全機能（MIMEファイルの中身を調べて、それがデータ・ファイル／実行可能ファイル／そのほかのファイルかを判断するプロセス）の仕様が変更される。PNGファイルにおいても、JPG／GIFと同様、IEでmagic-byte（マジックバイト）のテストが実行され、成功した場合にのみMIME処理が実行されるようになる。これにより、PNGファイルに偽装した悪意のあるファイルを無条件にダウンロードしてしまうといった危険性を低減できる。

■MS07-057の修正プログラム適用による既知の不具合
　 MS07-057の修正プログラムを適用すると、以下の不具合が発生することが明らかになっている。

• Windows XP SP2＋IE 6で開いているWebページから異なるWebサイトを開くと、IE 6がクラッシュする。
• IE 7で「Webページは表示されません」のエラー・メッセージが表示される。

　適用前に不具合を検証し、業務に支障が生じないことを確認した方がよい。

・サポート技術情報 940072（FIX: アクセス違反で JavaScript ガベージ コレクタが TBODY、 THEAD または TFOOT HTML タグを実行し、そして Windows XP でのテーブルから動的に削除すると、 Internet Explorer 6 が終了できます）：［Windows XP SP2＋IE 6］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;918961

・サポート技術情報 942818（Windows Internet Explorer 7 更新プログラムの Windows Update または Microsoft Update からインストール後にエラー メッセージ:「 Webpage が表示されていない」）：［IE 7］
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;942818

■MS07-057の修正プログラムには複数の不具合修正が含まれる
　MS07-057の修正プログラムには、以下の不具合修正が含まれている。MS07-057の修正プログラムを適用することで、これらの不具合が解消する可能性がある。

　修正プログラムが正しく適用できたかどうかは、以下のレジストリ・キーにある値を調べることで確認できる。

・Windows 2000 SP4＋IE 5.01 SP4：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Internet Explorer 5.01\SP4\KB939653-IE501SP4-20070817.120000\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows 2000 SP4＋IE 6 SP1：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Internet Explorer 6\SP1\KB939653-IE6SP1-20070817.120000\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows XP SP2＋IE 6：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP3\KB939653\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows XP SP2＋IE 7：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows XP\SP0\KB939653-IE7\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 6：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP3\KB939653\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 7：
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Updates\Windows Server 2003\SP0\KB939653-IE7\Filelist以下のファイル一覧を確認する

・Internet Explorer 7（Windows Vista）：
置き換わるファイルのバージョンで確認する

・Windows 2000 SP4＋IE 5.01 SP4：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE5.01sp4-KB939653-Windows2000sp4-x86-JPN.exe」で登録

・Windows 2000 SP4＋IE 6 SP1：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE6.0sp1-KB939653-Windows2000-x86-JPN.exe」で登録

・Windows XP SP2＋IE 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：WindowsXP-KB939653-x86-JPN.exe」で登録

・Windows XP SP2＋IE 7：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE7-WindowsXP-KB939653-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 6：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：WindowsServer2003-KB939653-x86-JPN.exe」で登録

・Windows Server 2003 SP1／R2／SP2＋IE 7：
［展開ビュー］−［IE］タブに「名前：IE7-WindowsServer2003-KB939653-x86-JPN.exe」で登録

・Internet Explorer 7（Windows Vista）：
現在のところサポート対象外